3月16日 名前のはなし 第3回
(カテゴリ:獣医師の雑談) (投稿日:2018年03月16日)
こんにちは!
3月14日の飼育員ブログでケラケラ笑わせてもらった獣医師です!!
せっかくなので便乗して獣医師あるあるをひとつ。
「動物の下痢うんちの検査をした後、お昼ご飯がカレーでも平気」(ドヤァ)
...さすがに汚すぎましたね。
さて、本日は「名前のはなし」シリーズの第3回目(たぶん)です。
前回の更新が昔すぎてあんまり自分でもよく覚えていませんが
このシリーズは、名前の意味とか由来とかが大好物の獣医師が
動物の名前の意味などをご紹介するやつです。
獣医学は少しも関係ないやつです。
本日のターゲットは、とうとう明日の17日がお披露目!
ヨツユビハリネズミ!です。
現在は動物診療所の入院室内でモゾモゾしていますよ。
(パッと見よくわかりませんが、各衣装ケースに1頭ずつ入っています)
和名の「ヨツユビハリネズミ」ですが、
「ヨツユビ」は読んでそのまま、指が4本であることから。
うん、確かに4本だ。
(後ろ足の指が4本。前足の指は5本です)
「ハリネズミ」もそのまま、「針」「鼠」です。
うんうん、背中は針だらけですね。
なお、名前にネズミと付いていても、ネズミの仲間とは違います。
サイズ感だけでいえば、カピバラよりもハリネズミの方が
ずっとネズミですけどね。
英名は"Four-toed hedgehog"(フォートゥード ヘッジホッグ)。
"four"は「4」、"toe"は「つま先」のことですから、
これもきっと「指が4本あるよ」という意味でしょう。
"hedge"は「垣根」、「生垣」。
野生の生息地ではハリネズミたちって垣根の周囲にいるんでしょうか?
それとも背中の針山が、来るものを阻むフェンスっぽいから?
ちょっとここは調べ切れていないです。
そして"hog"はブタのことです。
英名にブタと付いていても、ブタの仲間とはやっぱり違います。
この鼻先を見ると「ブタ」と言いたくなる気持ちはわかりますけども。
さて次は学名です。
"Atelerix albiventris"(アテレリクス アルビベントリス)といいます。
"atele-"とかいうのは「不完全な」という意味です。
えっ不完全なの?と思いますが、
指が4本しかないことをこう表現しているようです。
(世界的人気者の某ネズミとその仲間たちのことがチラッと思い浮かびます)
"albi"は「白い」という意味です。
生まれつき色素を合成できない、体の白い動物を
「アルビノ」と呼ぶときも同じ意味です。
それから、"ventris"は「おなか」のことです。
つまり、"albiventris"では「おなかが白い」という意味...(ゴクリ)
...ふむ、確かにおなかが白い...ふかふか柔らか......これはかわいい。
とまあこのように、名前の意味を知ると
「指が4本」「トゲトゲが生えている」などの
動物の客観的な特徴だけでなく
「ネズミっぽい」「いやブタっぽい」などといった
名付けた人の主観じゃないの?っていう特徴も知ることができ、さらには
「おなかが白い」のが
名付けた人の胸キュンポイントだったんだろうな~とか妄想することもできて
面白いです。動物園で学んでよし、共感してよし。
今日はおまけでもう1種軽く紹介。
中南米の水辺ゾーンより、ジェフロイクモザルです。
さて和名・英名を端折っていきなり学名にすっ飛びますと、
"Ateles geoffroyi"(アテレス ジョフロイ)といいます。
"ateles"ってつい最近聞きませんでしたか?
正解はもちろんヨツユビハリネズミの学名の"atelerix"ですよ。
クモザルたちの"ateles"も同じ、「不完全」という意味。
その意図するところは、これまたヨツユビハリネズミと全く同じく
「指が4本しかない」ということです。
拡大すると、このとおり。
これほど頻繁に学名につくぐらい、昔の人にとっては4本指が衝撃的だったのか。
ちなみにですが、よく見るとヨツユビハリネズミとは対照的に
手(前足)の指は4本、後ろ足の指は5本になっています。
ハリネズミたちは3月17日(土)からふれあい動物広場で展示開始です。
クモザルとは全然違う場所ですが、上記のように思わぬ共通点もあるので
ご来園の際はぜひ手先・足先までよく見て
他の動物とも比べてみてくださいね!!
担当:田丸