4月21日 動物の快適な暮らしのために・・・
(カテゴリ:獣医師の雑談) (投稿日:2023年04月21日)
皆さん、こんにちは!
はいっ!新年度!!
桜の季節は終わってしまいましたが、すごくきれいな写真を飼育員からもらったので、
載せさせていただきます。
私はときわ動物園に入ってから3年目に突入しました!!
後輩の獣医師さんが入ったとか。
いつまでも新人気分ではいられませんね。
今年度も、より一層、がんばっていきたいと思います!!
そんな個人的な目標は置いておきまして、今日は飼育員ではなく、獣医師の雑談コーナーです!
少し真面目な、長いお話になるかもしれませんが、お付き合いください!
今日は、動物園全体で取り組んでいる動物の快適な飼育環境づくりに向けた取り組みについて、
お話したいと思います。
飼育員が動物の給餌器を作ったり、ヘチマたわしを作ったり、イカダを作ったりしています。
(過去の飼育員のブログを見てみてね!)
それも動物が快適に暮らすための取り組みですが、今日お話しするのは、こちらです!!
『計画的に動物の繁殖をしよう』ということです!!
繁殖というのは、動物の赤ちゃんが産まれるということです!
動物の赤ちゃんはかわいいですよね!!
産まれたばかりのパタスモンキーの赤ちゃん(現在は大きくなっています!)
ではなぜ計画的に動物を繁殖させると、動物の快適な暮らしにつながるのでしょうか。
みんなで考えてみましょう!!
動物たちがたくさん繁殖して、赤ちゃんが増えてしまったら、どうなるでしょうか。
動物園は飼育している施設の数、広さは決まっていますよね。
動物が増え続けてしまうと、限られたスペースの中にたくさんの動物が暮らすことになり、
1頭あたりのスペースが狭くなってしまいますね。
動物どうしがちょうどいい距離感で暮らせる!!
動物の数が増えてしまって、窮屈になってしまう・・・
そうすると、動物どうしがけんかしてしまったり、
動物たちのうんちやおしっこで部屋が汚くなりすぎてしまったりします。
動物が増えれば増えるほど、動物にとって快適というわけではありません。
満員電車を想像してみてください。
ちょっと窮屈ですよね。(山口県ではあまり遭遇しませんが・・・)
人がギュウギュウのところにいるのは、ストレスを感じると思います。
動物たちも同じです。
動物は、お話をして教えてくれることはありませんが、
狭いところにずっといると、ストレスを感じてしまいます。
そのため、動物園では動物の頭数を増やさないように、
計画的に動物の繁殖を行う必要があります。
計画的な繁殖というのは、簡単に言えば、赤ちゃんが増えすぎるのを防ぐということです。
最近の動物の研究では、動物に薬を注射したり、薬を動物の体の中に埋め込んだりすることで、
繁殖を抑える、つまり赤ちゃんが産まれないようにするという方法が知られています。
計画的な繁殖を行うために用いる薬
しかし、そのような薬は、研究されている動物の種類が限られていて、
ときわ動物園にいるパタスモンキー、リスザル、ミーアキャットなどの動物では、
あまり調査・研究がされていません。
そのため、ときわ動物園では、他の動物園の飼育員さんや大学の先生と一緒になって、
まだ研究されていない動物園の動物の計画的な繁殖の方法について、調査・研究しています。
具体的にはどんな研究をしているのかというと、
動物のうんちをあつめて、うんちの中に含まれる『ホルモン』というものを測定しています。
『ホルモン』?え、焼肉??食べたいっ!!!
よだれがでてしまった方、ごめんなさい。
残念ながら、そのおいしい『ホルモン』ではありません!!
ここでいう『ホルモン』とは、動物の体でつくられ、体のさまざまな働きを調節する物質です。
特に繁殖に関わっているホルモンを性ホルモンといいます。
動物のうんちの中に、性ホルモンがどのくらい含まれているのかを測ると、
その動物が赤ちゃんを産む準備をしているのか、
それとも赤ちゃんを産めない状態なのかがわかります。
うんちから動物の状態を予想することができるんです!!
うんちってすごい!!!本当にすごいんです!!
あ、うんちについて語り始めたら、止まらなくなってしまうので、今日はここまで。
うんちの小話はまたの機会に・・・
話を戻しますと、
赤ちゃんが産まれないようにする薬を注射したり、埋め込んだりした後に、
ちゃんと薬が効いているのかを確かめるために、性ホルモンを測って、調べています。
乾燥させたうんちを乳鉢・乳棒という器具を使って、すりつぶします。
うんちの中からホルモンを抽出している(取り出している)ところです。
この動物園の動物の計画的な繁殖についての調査・研究が、
今年の1月に開かれた動物園技術者研究会という動物園の研究成果を発表する会で、
優秀ポスター賞を受賞しました!!
飼育員が地道に動物のうんちを集めて、獣医師が性ホルモンを測って。
連携プレイです!やったね!!
ご指導いただきました大学の先生、ありがとうございました!!
今後も、全国の他の動物園と協力しながら、
いろいろな動物の種類で計画的な繁殖について、調査・研究を行う予定です。
すべては『動物の快適な暮らしのために・・・』です。
タイトル回収できましたでしょうか。
動物園はこんなこともしているよということを知ってもらえたら、うれしいです!
新年度もときわ動物園をよろしくお願いいたします!
担当: 對馬(つしま)