9月20日 ミステリーの秋
(カテゴリ:飼育日記) (投稿日:2016年09月20日)
わたしたち飼育員は、動物そのものはもちろん、動物たちのうんちや食べ残しなど、動物たちが残してくれたヒントを観察して体調を把握し、対策をとります。
寝室を観察して清掃をしていると、壁についた足跡、抜け毛、かじった枝など、いろいろなものが目につき、動物たちが夜の間どんなふうに過ごしていたか想像してはうっかり にやっとしてしまうことも。
ルーティンワークのようで実はルーティンではない、わたしは意外と好きな時間です。
そして、ある日のシシオザルの寝室。
サルたちの元気な姿にほっとして、展示場へと送り出し、清掃をはじめます。
いつもはうんちと、食べたり遊んだりした葉っぱの残りと、たまーに与えたエサの残りがあったり、抜けた毛が落ちているくらいなのですが...
こんなものが。
とまり木をかじったのかな?と思いましたが、なんだか違います。
なんだこれ?
木の実の殻のよう...
あれ?
木の実なんてあげたっけ?
まさか、だれかが何かあげちゃったんじゃ...?
たまにいるんだよねえ、エサあげちゃうお客様...
でも、何あげたんだろ?
頭の中に「?」を抱えたまま清掃を終え、シシオザルたちを観察していると...
なにやら拾って食べています。
さらにぼんやり観察していると...
ぽつ、ぽつ、ぽつ、という音。
地面には黒豆のようなもの。
サルたちの上空には、木の枝が伸びています。
どうやらここから落ちているようです。
ふむふむ、犯人(...別に悪いことしてないけど...)が見えてきました!
この木はエノキといって、実がなります。
落ちた実はこんなかんじ。
皮を破るとやわらかくなった果肉があり、その中心にこんな黒い種があります。
シシオザルはこの実を食べて、種をかみ砕き、残った殻を吐き出していたんですね。
たいした謎じゃあ なかったぜ。
あれあれ?
でも、黒い殻が落ちていたのは寝室の中でした。
ちょっと考えてみると、その答えは簡単。
展示場で拾ったエノキの実をほっぺにある「頬袋」に貯めて寝室に帰り、種を割ってばりばり食べたのは寝室のなかだった、というわけ。
あっさり解決!
こちらはトクモンキーの頬袋。
ぱんぱんに貯めすぎて途方に暮れているかのような...大丈夫かい?
シシオザルの頬袋は自慢のたてがみでわかりにくいですが、ちゃーんとあります。
でもこの頬袋、どのサルにもあるわけではないんですよ~~~!
頬袋好きとしてはお話したいところですが、いかんせん長くなるので、ぜひときわ動物園でいろいろなサルを観察して考えてみてくださいね♡
ちなみに、熟してやわらかくなった黒い実は よくわからないぼんやりした味のジャムのようなかんじで、緑色の若い実は渋くてとても食べられたものではありませんでした。...が、シシオザルにこの渋い実も与えてみると、奪い合うようにして食べていました。
サルの味覚、おそるべし。
「食欲の秋」到来の今、エノキのように実をつける植物がたくさんあります。
旬をしっかり感じとって動物たちに楽しんでもらえるように、わたしも楽しみたいと思います。
動物園は人がつくりだした環境ですが、それでも動物たちはやっぱり自然とともに生きているんだなと実感して、ほんのりしあわせな気持ちになりました。
暑くもなく寒くもなく、過ごしやすい日が増えてきました。
秋は"動物園日和"がいっぱいです。
季節によって変化する植物、植物や気候によって変化する動物の行動に注目しながら のんびり動物園を楽しんでみてはいかがでしょうか?
担当:かわで