3月19日 めでたいっ!
(カテゴリ:飼育日記) (投稿日:2016年03月19日)
ときわ動物園、本日グランドオープン!
たくさんのお客様にご来園いただき、最高のスタートを切ることができました。
ありがとうございます!
これからも応援よろしくお願いいたします!
そんなおめでたい今日のブログは、シシオザルのおめでたい話題!
ただし、長いです!心してお読みください!
3月8日、シシオザルのヒロが出産しました!
お母さんになったヒロですが、実はこれが3回目の出産。
一昨年5月、昨年7月にも出産していますが、赤ちゃんが未熟だったこと、ヒロのおっぱいが出なかったことなどが原因でいずれも生後数日で亡くなってしまいました。
昨年7月の出産後、8月中旬にはヒロの発情(赤ちゃんをつくる準備ができているというサイン)がみられ、つぎの妊娠の期待が出てきました。
写真は今年1月。すっかりお腹が大きくなっています。
今回はぜったいにうまくいきますように!と飼育員も意気込み、ヒロの体調をととのえるよう心がけていきました。
体重もこまめにはかって記録。
今までよりも体重が増え、胎動もはっきり見ることができました。
いいかんじ!
しかし、最大の問題は「おっぱい」!
2年連続でおっぱいが出ていないため、今回もうまく授乳できない可能性が高いと考え、おっぱい問題を解決するべく、いろいろな準備をして出産にそなえました。
「おっぱい観音」と名高い周南市の川崎観音でお参りも。
そして3月8日の朝8時ごろ、ヒロの出産を確認しました!
母子とも元気そうで、昼ごろには赤ちゃんがヒロのおっぱいに吸い付いているのも確認できました。
ほかのサルたちの出産では、この様子が確認できると「授乳確認」と判断し、ほっと一息...
なのですが、ヒロの場合はそうはいきません。
一昨年、昨年も赤ちゃんはおっぱいに吸い付いていたものの、実際には授乳できていませんでした。
そして昼過ぎ、ヒロが「おかしいな?」というかんじで赤ちゃんを体から離して 調べるようにじっと見ることが増えてきました。
これは、これまでもみられた行動で、赤ちゃんがうまくおっぱいを吸えていないことに違和感を感じての行動に見えました。
また、赤ちゃんもおっぱいに吸い付く回数が減ってきて、高まる心配...
一度ヒロに麻酔をかけて、おっぱいが出ているかどうかを確かめることにしました。
まずはこんなふうに檻に入ってもらい、
獣医さんが麻酔をうって、おっぱいをもみます。
でも、おっぱいは出てきません。
この時赤ちゃんはどうしていたのかというと...
一旦ヒロから離して体重と体温をはかって、体力があるかどうかをみます。
459g、これまでの2頭よりかなり大きいメスでした。
体温低下もなく、元気いっぱい。
あたためた砂糖水を少しだけ飲ませて、ふたたびヒロのお腹に抱きつかせました。
ヒロには、おっぱいが出るように促すホルモン剤をうちました。
そしてこの日は一晩様子を見ることに。
哺乳類の赤ちゃんがおっぱいを飲まなくても生きられるぎりぎりの時間は、約48時間と言われています。
どうしてもおっぱいが出ない場合には、飼育員がミルクをあげて育てる「人工哺育」に切り替える覚悟もしていました。
人の手で育てると、栄養たっぷりのミルクを好きなだけ飲むことができるので、ふつうに育つ赤ちゃんよりも体格よく健康に育つことが多いです。
しかし、人工哺育にはそれ以上のリスクがいっぱい。
人になれすぎて、本来一緒にくらすべき同じ種類の動物たちとコミュニケーションをうまくとれず、繁殖やその後の子育てがうまくできなかったり、生涯1頭だけですごすことになってしまうことも少なくありません。
とくに、群れでくらすサルにとってこれはとても大きな問題です。
サルの一生を考えると、人工哺育に切り替える決断は簡単にできるものではありません。
こんな背景があるので、なんとかヒロに育ててほしい!と強く願っていました。
そして、どきどきしながらむかえた出産の翌日。
赤ちゃんのおっぱいへの吸い付き方が昨日とは明らかに違い、力強ささえ感じさせます。
ヒロも赤ちゃんを調べるような行動をほとんどとらなくなっていました。
でも、これではまだ授乳確認とはいえません。
さらにどきどきしながら
赤ちゃんのお腹を触ってみると...
お!?
なんだかふくらんでる!
おしりを触ってみると...
おしっこがたくさん出てる!
水分がとれているのは確かのようです。
でも、これではまだ授乳確認とはいえません。
そして生後3日目、ヒロのおっぱいをもんで絞ることができました。
写真ではわかりにくいことこの上ないですが、わたしの左手の指の間に見える小さな小さな白い点のようなもの、わかりますか?
これが、ヒロのおっぱいです!
そしてすぐ隣でもう一方の乳首に吸い付く赤ちゃん!
授乳確認!
この瞬間をどれだけ待っていたことか!
赤ちゃんの元気な様子とこの授乳確認によって、やっと安心することができました!
はじめての子育て、ヒロにはこれからが大変と思いますが、きっと乗り越えてくれることでしょう。
かいがいしく毛づくろいをするパートナー・レタスの存在も心強いです。
最後に、体重測定、檻に入ってもらうこと、搾乳をすること、赤ちゃんを触らせてもらうことなどは、ハズバンダリートレーニングの手法を活用して行いました。
エサをあげてそうじをする、という通常の飼育管理だけではできないケアが実現したのは、1年以上前からトレーニングに取り組んできた成果。
何よりヒロがとても素直ないい子で、トレーニングに協力的だったおかげです。
ヒロ、本当におめでとう!
ぜひみなさんも、山あり谷あり頑張ったシシオザル親子に会いに来てくださいね!
担当:かわで