12月15日 片腕の「ちー」から思うこと
(カテゴリ:飼育日記) (投稿日:2015年12月15日)
さて、上の2頭のボンネットモンキーの違い、分かりますか?
そうです、左側の個体、左腕がありません。
ガイド中に来園者の方から、
「腕の無い子を見たんだけど」と
しばしば質問をいただきます。
この個体、「ちー」というメスのボンネットモンキーです。
母親に抱かれていた頃、
群(むれ)内の闘争に巻き込まれて、左腕にケガを負いました。
ケガの程度がひどく、左腕を切除し現在に至ります。
術後の写真。
まだまだ幼い「ちー」です。
予後の観察のため「ちー」は長期間、群から離れることになりましたが、
無事、群に復帰しました。
たくましく生きている「ちー」ですが、
担当の私は、次のステップに期待しています。
それは、コドモを産み、育てていくことです。
動物園には飼養する野生動物の「種の保存」という役割があります。
つまり後代を残し、種を繋いでいくこと。
ボンネットモンキーは群で生活するサルです。
群の中での
同世代のじゃれあいや
他個体との毛づくろい、
年代の異なる様々な個体との生活の中で、
他個体との関係や社会性、コドモの育て方など、多くのことを学んで成長していきます。
そのため、"群に復帰"することは最初のステップなのですが、
この先、種を繋いでいくためには大変重要な出来事だったのです。
「ちー」のようにケガにより長期間群を離れる場合のほか
やむなく人工哺育で群を離れてしまう個体もいます。
群復帰後のボンネットモンキーを担当する私は、
復帰した個体がコドモを産み、無事、育てたときに
完全な群復帰になるのかなぁと感じています。
悲しいかな「ちー」からは逃げられるんですけどねぇ。
担当:木村