11月4日 こんなん使ってます
(カテゴリ:飼育日記) (投稿日:2015年11月04日)
こんにちは!ブログのサボり癖が本格化してきた獣医師です!!
もうなんか開き直っていきます。
秋の話題がこのブログでもちらほら紹介されていますが!
動物園の秋は、サルたちの闘争が多い時期でもあります。
寒くなる前に食料をたくさん食べておくためか、
はたまたかわいいメスと交尾できるよう、オス同士で強さを競っているのか...
今年はボンネットモンキーの群が少しざわついたようでした。
群の中には、ちょっと痛々しい怪我をしている個体や
かなり痛々しい縫合跡のある個体がいます。
(写真は自己規制...見てみたい方は動物園で
ボンネットモンキーⅡ群の中を探してみてくださいね!)
深い傷でなければ意外と治ってしまうので、
わざわざ捕まえに入って群を緊張させるよりも
放っておいたほうがいい場合もあります。
でも、皮膚だけでなくその下の筋肉まで切れているなど、
大きな怪我の場合は捕まえて治療します。
ということで、今日は手術道具をいくつかご紹介しますね。
基本のセットが、ばーん
こんな感じです
これはいわゆる鋏(ハサミ)。
専門的には、格好良く「鋏(きょう)」と読んだりします。
皮膚・糸・やわらかい組織など、何を切るかによって何種類かを使い分けます。
これらは鉗子(かんし)といいます。
ハサミのような形ですが切るためではなく、はさむために使います。
手術中に出血があったら血管をコレではさんで止血したりするのです。
上は把針器(はしんき)。
鉗子と似たようなつくりですが、先端ではさむのは針。
糸を通した針をコレでつかんで、傷などを縫います。
その下にあるのはメスです。
ナイフ状の器具です。ご存知の方もきっと多いはず。
使い捨てのメス刃を、持ち手に装着して使います。
こちらはピンセット。
格好よく呼ぶと「攝子(せっし)」です。
よく見ると先端の太さや構造が違っていて、つまむ相手によって使い分けます。
さてズラリと揃ったこれらの器具ですが、実はそのまま使うわけにはいきません。
洗ってきれいに見えても、素手で触れば何かしらの細菌が必ずつくものなので...
箱に入れて...?
電子レンジみたいな機械で
滅菌します!
殺菌とか消毒とか似たような言葉がありますが、
「滅菌」はすべての細菌を死滅させて無菌状態にすることです。
いくら器具がきれいでも、噛まれた傷の方はどうしても細菌だらけになっているけど...
それもできる限り洗いまくってきれいにして、
きれいな器具で手術を始めるわけです。
できあがると、
"STERILIZED"(滅菌済)の文字がシール上にうっすら浮き上がります
皮膚や筋肉がちょっと切れた程度の怪我なら
この基本のセット(+針と糸)があればだいたい処置ができます。
でも、以前のブログでご紹介したように
手術よりもっと大変なのは術後の傷の管理です。
サルは手がとても器用で、
傷を縫い合わせた糸が気になって自分で取ってしまうことが多いからです。
そこで実は最近、傷跡がなるべく痛くない&痒くない縫い方を試していて、
今年のボンネットモンキーたちには正直手応えアリだったんです!!
もともとの性格もあるのでしょうが、
新しい縫い方を3頭試して1頭もセルフ抜糸していないんですよ!
おかげさまで傷を縫う技術もじわじわと上達してきてありがたい...
けど本当は、縫わなきゃいけないような怪我なんかしないでほしいなあ...
そんなアンビヴァレントな獣医師の秋でありました。
担当:田丸