10月11日 エサ、変えてます!
(カテゴリ:飼育日記) (投稿日:2015年10月11日)
じゃじゃん!
と言うほどではないですが、まったく違うものが入っているこの2つ、どちらも今日のトクモンキーのエサ。
なになに?どういうこと?
順番にお話しますので、最後までお付き合いくださいね!
突然ですが、『サルにバナナ禁止!』というニュースに見覚えはないでしょうか?
「サルといえばバナナ」というくらい、サルはバナナ好きのイメージがありますよね。
試しに友人にサルの絵をかいてもらったところ、妙に目力の強いサルがなぜか頭上にバナナをのせた絵をかいてくれました。
(※本人の許可を得て掲載しています)
一般的なイメージはさておき、ときわ動物園ではほぼすべてのサルにバナナを与えており、大喜びで食べているように見えていたので、わたしもとても興味深くこのニュースを読みました。
他の動物園の方から情報をいただいたところ、話題のもとは昨年イギリスの動物園が発表した論文で、「糖分の多い果物はサルの健康に良くなく、低カロリーで低糖質、高たんぱくのエサが良いよ」というような内容でした。
バナナだけでなく果物全般を与えることをやめ、ほかにもいろいろな調整をされたそうです。
サルたちは果物が大好き。それは動物園のサルも野生のサルも同じです。
しかし、動物園でエサとして仕入れられる果物は、みなさんがスーパーで買うものと同じで、野生のサルが食べているものとは比べ物にならないほど甘くておいしいもの。
実は、それが逆に問題なんです。
論文では、エサを変えたことで 肥満が減ったり虫歯が減ったりしてサルの健康状態にプラスの変化があらわれたことが報告されています。
ときわ動物園のサルたちは、もともと健康状態が悪かったわけではないのでエサを大きく変えることに不安もありましたが、この論文を読んで著者の方に連絡をとったり、いろいろな文献をあさったりするうち、とってもいいことなのでは?と思うようになりました。
そして、今年のはじめごろからわたしが担当するトクモンキー、シシオザル、ハヌマンラングールでエサの見直しを行い、徐々に果物を減らして野菜中心のエサに変えていきました。
ときわ公園内からとってくるたくさんの種類の枝葉や野草も毎日与えています。
この写真で食べているのはヤマモモ。
エサを変えてみると、サルたちにも変化が出てきました。
痩せていたニゴ(トクモンキー・♂)の体が大きくなってきたり...
毛並みが悪かったガッツ(シシオザル・♂)のたてがみが立派になってきたり...
群れのなかでのケンカも減ってきたような...
とにかくどんどん調子が良くなっている実感がありました!
探り探り取り組んできたことに、サルたちがこたえてくれているようでとってもうれしかったな~!
そして、このうれしい実感をみなさまにもお伝えすべく、トクモンキーに対してある試験をはじめました。
詳細はまたの機会に...
トクモンキーは現在12頭で、A・Bの2つの群れでそれぞれ6頭ずつ飼育しています。
そのうち試験の対象はA群。
一時的に以前のエサに戻してデータをとり、今度は見直したエサに変えてデータをとる。
そしてその変化をみてみよう!というものです。
そんなわけで、右の果物が入ったものは試験中のA群のエサ、左は見直し後のB群のエサなんです。
ふー、説明べたですっかり長くなってますが、読んでくださってますか?
あと一息~!
さらにさらに、この試験でもハズバンダリートレーニングが大活躍!
(ハズバンダリートレーニングってなんぞや?という方は検索を!すみません!)
これによってトクモンキーでは、コロ(♂)、ニゴ(♂)、マナー(♂)の3頭の体重測定ができるようになっています。
(自分でもびっくりするくらいわかりにくいですが、トクモンキーのニゴの体重測定の様子です)
トレーニングをしていないと、つかまえて檻に入れないと体重をはかることはできず、動物のストレスや飼育員の手間を考えると頻繁に行うのはなかなか難しいことです。
ハズバンダリートレーニングをすることで、動物たちが協力してくれるので動物にも飼育員にも無理なくデータをとることができます。
日々の体重測定は、日常的な健康管理はもちろん、試験の大切なデータにも。
試験の結果をほかの動物たちの飼育管理にも生かしていきたいと思っています。
しかし、変更したエサもまだまだ改良が必要ですし、これでばっちり!というメニューができても、定期的に見直すことが大切です。
トクモンキーは雑食性で、果物も野菜も木の葉も虫も、割とどんなものでも与えれば食べてしまいます。
なんでも食べるサルだからこそ、何を食べさせるのか?どんなふうに飼育してどんな姿を見てほしいのか?ということを大切にしていきたいと思います。
そして最後に、みなさまにお願い。
どの動物のエサも、飼育員が日々悩んで考えて決めています。
動物へのエサやりはご遠慮くださいね!
最後までお読みいただきありがとうございました!
試験結果のご報告はしばらく先になりますが、お楽しみに~~~!
担当:かわで