6月21日 飼育員の考えごと
(カテゴリ:飼育日記) (投稿日:2019年06月21日)
今年の春、当園で飼育している2頭のタヌキがケンカをしてしまい、マユゲ♂が背中をケガしてしまいました。(ケンカの原因は分からず)
やむを得ず、捕獲し、獣医師に手術をしてもらい、
その後も傷口のこまめな消毒や注射・投薬が必要だったため、マユゲの展示をお休みし、入院・治療に専念しました。
マユゲは入院中、注射に耐え、毎日薬いりの餌をしっかり食べてくれたため、治療は無事に終わりました。
しかし、このあとの退院が大変・・・。
ただ戻して終わりとはいかないのです。
放飼場にいる♂カズヤと合流させることで、再び大ゲンカをすることがあるのです。
「えっ、兄弟だし、ついこの間まで一緒の場所で生活してたのに?」
って思うかもしれません。
しかし、そこが難しいところ・・・。
放飼場からマユゲが入院して、いなくなることで、残されたカズヤが
「あれ?マユゲがいない。なんで?じゃあ、ここは俺の場所?」
って意識が芽生えることがあります。
そんな意識が芽生えたところに、マユゲを退院させて元の場所に戻すと・・
「ここは俺の場所だぞ!何しに来た!!怒」
ってなってしまうことがあるんです・・・。
そして、マユゲからみれば、
「前に俺もいただろ?いーや、ここは俺の場所だね!」
って、なってしまうことも・・・。
退院時など、一度でも別々の場所で飼育していた動物たちを同じ場所に合流させるときはケンカが起きやすいリスクがあるのです。
もちろん、動物種の種の特徴や個体の性格などで、合流のときの状況やケンカが起こる起こらないは変わってきます。
その都度、準備や動物たちの性格などを観る観察が重要になってきます。
タヌキの担当になり、マユゲとカズヤを観てきて、マユゲとカズヤはお互いの立ち位置が決まるまでは、ケンカをしやすい傾向がありました。そこで退院の数日前から合流に向けて準備をします。
まずは放飼場内でケンカになったときに相手から逃げる場所を作ります。
写真をみていただけると真ん中に大きめの丸太があるのが見えるでしょうか。あれも避難するための工夫の一つです。(鬼ごっこをするとき、小さい遊具などを挟んで、鬼が右からきそうなら、左に逃げようとする、左から鬼がきそうだったら右に逃げようとするといったことはありませんでしたか?あんな感じです)
ケンカになったときに逃げやすいように放飼場内のレイアウトに気をつかいます。
そして、退院前にお互いのタヌキたちにある程度の餌を与えておきます。
合流させたあと、放飼場で餌を与えようとしても、他のタヌキが気になって、餌を食べないことがあるからです。
(あと、空腹時はイライラしやすいというのもあります。そう、私と一緒・・・汗)
いろんなことを予測し、それに対して準備をし、いよいよ合流させます。
あーやっぱりケンカが・・にらみ合ってる。
マユゲがカズヤへ体当たり・・・
仲良くしてよ~って思いながら見守ります。
ある程度、争いをして、お互いの力関係を認識させ、立ち位置を決めさせるのも重要だからです。
合流させてから、しばらく飼育員は観察を続けます。
争いの様子をみながら、力関係はっきりしているとか、あっこれはまずい。ケンカをやめさせなければって仲裁に入ったりとか、判断しなければならないからです。
「みて、判断」
これがとても重要になるときもあるからです。
そのためにも飼育員にとって、観察はとても大切です。
幸い、今回の合流させたときは、力関係がすぐはっきりしたため、大きなケンカにはなりませんでした。
今では一緒に昼寝をするくらい、関係が戻ってきました。
合流させる(退院させる)のが、どれだけ大変か、わかっていただけたでしょうか?
今回は動物を合流させるときのほんの一例を紹介しましたが、合流させるときの注意点や方法は種や個体、天候・施設・群れの構成などでさまざまな条件で変わります。
日々の観察から、これだ!っというのを選び、判断して取り組んでいきます。
飼育のことを知って欲しくて、今回は合流について記事を書いてみました。
飼育員の業種の専門性を知ってもらえたら幸いです。
(合流だけではなく、他にも専門的なことはいっぱいあるんですよ~勉強しなきゃ・・・)
しかし、この合流の時や動物を観察するときに思うのが、
某アニメに出てくる、目に装着して、相手の戦闘能力を数値化してみることができるあの機械・・・
動物の健康診断用、状態を把握する用に欲しい・・・。
あー開発されないかな・・・
って思いながら、
今日も動物たちを観察して、観察力を磨きます!
飼育員の考えごとは続きます!
坂口