4月1日 飼育員の考えごと(コツメカワウソの搬出)
(カテゴリ:飼育日記) (投稿日:2023年04月01日)
みなさん、こんにちは。
ブログで「飼育員の考えごと」と題して、勝手にシリーズ化していた坂口です。
お久しぶりです!
早いもので、私がボンネットモンキー・コツメカワウソの担当になって2年が経ちました。
2年間いろいろありましたが、印象に残るのは、やはりコツメカワウソの搬出でしょうか。
前回、同じ飼育担当チームの飼育員がコツメカワウソの「ショウ」の搬出について、思い出をふりかえりながら、ブログを書いていました。
それに乗っかって、今回は私目線でふりかえりながら、コツメカワウソの搬出についてブログを書きたいと思います。
2021年に担当になったとき、コツメカワウソは4頭飼育していましたが、
(上の画像 上がショウ、下がボンです)
(上の画像 上がキワで、下がリンです)
当時は繁殖管理のため、展示場には、♀の親仔(リンとキワ)、バックヤードには♂の親仔(ボンとショウ)と分けて飼育管理していました。
それから、2021年の夏にキワが鳥羽水族館へ、2023年2月にはショウがとくしま動物園へ旅立ちました。
4頭から2頭になってしまったこと・・・寂しくなるなぁって気持ちよりは、
無事に送り出せて、良かったと安心した気持ちのほうが私には強くありました。
ときわ動物園は、2015年にボンとリンをペアにして、これまで2回繁殖に成功してきました。
当時の担当者たちが、さまざまな工夫や努力をして飼育管理に当たっていたのをよく覚えています。
そのときに、生まれ育った子たちが、キワとショウです。
そして私が担当になり、キワの搬出が決まりました。その対応をするにあたって、正直に言うと、プレッシャーがありました。
というのも、動物の輸送はリスクがあります。みなれない輸送箱の中に入り、長時間移動するわけですから、動物にはかなりの負担がかかります。
さらに、コツメカワウソは興奮しやすく、体温が上がりやすいという特徴もあり、輸送時に注意が必要な動物でもあります。
これまでの担当者たちが大切に育ててきたキワに何かあったら、どうしよう・・・そんな不安な気持ちがありました(汗)
そんななか、あたふたしながらも、上司・先輩飼育員に助けてもらいながら、無事にキワを搬出することができました。
(キワの搬出のときの様子です。)
鳥羽水族館から「無事に着きました」と連絡が来たときの安心感は今でも忘れません。
そして、今回のショウの搬出。
キワのときのように、あたふたしないように、しっかり準備しよう!と決めていました。
幸い、ショウは普段から、体重測定などの健康管理のために自ら輸送箱の中に入る馴致ができていた個体でした。
ただ見慣れないものには警戒する傾向がありました。
(普段の体重測定で使用する輸送箱と今回の輸送で使用する輸送箱は大きさが異なるものでした。)
そこで、輸送当日に使用する輸送箱への馴らしを事前にすることにしました。
ショウが夜間過ごす寝室内に輸送箱をいれ、なれてもらう作戦です。
最初は何度もニオイをかいでいましたが、
すぐに中に入り始めたショウ。
お!これはいい感じ!?・・・っと、手応えを感じながら準備をしていきました。
そして、迎えた当日。
準備はしたし、何も問題はないはず・・・内心ドキドキしながら、ショウの部屋へ入り、対応にあたりましたが、
なんとショウは、とてもスムーズに輸送箱に入ってくれました。
なんて良い子!!
問題もなく、無事に搬出することができました。
そして、とくしま動物園から「無事に着いたよ」の連絡が来て、ほっと一安心。
さらに、「暴れん坊ショウ軍」というあだ名がつけられたと聞きました。(何をしたんだ?・・・)
元気でよかった!ε-(´∀`*)ホッ
そういうこともあって、私はさみしさよりも無事に送り出せて良かったという安心感のほうがありました。
コツメカワウソは、国内の動物園水族館では、よく飼育展示されている種ですが、
野生下では、開発による生息地の減少や毛皮目当て、ペット目的などの違法な取引・捕獲が原因で数が減っていて、絶滅が心配されています。
そのため、他園館と協力し、飼育下での繁殖に取り組むことは、とても重要です。キワとショウを搬出して、コツメカワウソの飼育下繁殖の取り組みに
間接的に関わることができて、担当者として嬉しい気持ちでいっぱいです。
さて、ときわ動物園に残ったボンとリン。
現在、
ボンは14歳、
リンは11歳になります。
飼育下のコツメカワウソの平均寿命は約16年ということを考えると、彼らは高齢になります。
これからも、静かにゆっくり過ごしてもらえるように、しっかりと飼育ケアをしていきたいと思います。
飼育員の考えごとは続きます。(・・・たぶん汗)
最後に、ショウ、とくしま動物園で元気に過ごしてね!
コツメカワウソ担当 坂口