炭都・宇部の歴史を今に伝える、日本初の石炭記念館
石炭記念館ブログ
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石炭記念館 見どころ紹介!③「モデル坑道」
3回目となる今回は、館内に併設しているモデル坑道についてご紹介します!
よく子どもたちが肝試し感覚で入っているのを見かけることもありますが(笑)、一度入られたことがある方にはとても印象に残るところではないでしょうか。
モデル坑道は石炭記念館1階の展示室奥にあり、宇部の昭和30年代頃の海底炭鉱の採掘現場を中心に再現しています。
「入気坑道」と「排気坑道」とありますが、これについて少し説明すると、地中深くを採掘する炭鉱にとって、坑内に新鮮な空気を取り入れることはとても重要なことです。そのため、入気坑道や排気坑道をはじめ、内部の細かい坑道は平行な2本のつくりになっていました。
そして、地上の排気坑道の坑口には大型の排気ファンが設置されていて、その排気ファンで汚れた空気を吸い出すことによって気圧の差が生じて、入気坑道から自然に新鮮な空気が供給されていました。
石炭記念館のモデル坑道では、この入気坑道と排気坑道が隣接してありますが、実際は空気や水の流れを考えて、これらの坑口は離れた場所にありました。
モデル坑道の全長は75メートル。このなかには、
軟弱な地質の場所を掘り下げる際に流れ出る土砂や湧き水を防ぐ目的で、明治19年(1886年)に厚狭郡藤山村(現在の宇部市)の船大工・和田喜之介によって発明された「蒸枠(むしわく)」という、湧き水が多い宇部地方では画期的な工法や(※ここでは蒸枠の工法のうち「斜坑蒸枠」を再現しています)
昭和の初めごろに宇部で考え出されたという鉄道などで使われた古レールとコンクリート製の脚を使った「金梁(かなばり)コンクリート脚(あし)」
などといった宇部にまつわるものから、
多くの炭鉱で長い間、使われていた「木枠(もくわく)」や、
こちらも古レールをアーチ型に組み合わせた「レールアーチ坑道」
大正から戦前にかけて長期維持坑道に使用された「レンガ捲き坑道」
戦後の長期維持坑道を担った「コンクリート坑道」
といった全国的にも見られるさまざまな坑内支保(※鉱山やトンネル工事などで落盤や落石を防ぐため天井や坑壁を支持する構造物)の種類が再現されています。
また、採掘現場の最前線である「採炭切羽(さいたんきりは)」で再現しているのは、「カッペ採炭」の光景。
「カッペ採炭」とは西ドイツから輸入された採炭技術で、天盤の高さに応じてセットが可能で、技術の優劣なく誰でも取り付けが容易な鉄製の支柱「鉄柱(てっちゅう)」(※モデル坑道で使われているのは「摩擦鉄柱」と呼ばれるもの)と、木材よりもはるかに優れた強度をもつ「カッペ」という金属製の梁を用いることから、そのように呼ばれていました。
この技術により、作業スペースである切前(きりまえ)に支柱が必要なくなったため、採掘が容易になりました。
また、そのほかにも、切前のコンベヤーとして定評のあった「パンツァーコンベヤー」や
コンベヤーをガイドとして左右に移動しながら石炭の壁を削って、コンベヤーの上に落としていく「ライスハーゲンホーベル」など、機械採炭のようすも再現しています。
また、よく見落とされているのが、天井についているこのボルト。
これはただのボルトではなく、「ルーフボルト」と呼ばれる岩盤にボルトを埋め込んで天盤を支えたもので、これも坑内支保の1つです。
といったように、この坑道内にあるものすべてではありませんが、実際の使われた炭鉱の器具や機械を用いて、宇部の海底炭鉱のようすを75メートルという短い距離のなかでぎゅっと凝縮して再現しています。
実際の宇部の炭鉱では、坑口から採掘現場までおよそ10kmあったところもあり、また、坑内はもっと複雑で、こんなに明るくもなく、海底炭鉱であった宇部炭田の坑内は湿度も高かったそうです。
しかし、現在、宇部で坑内に入れるような場所は失われてしまっているため、ここが宇部の海底炭鉱の雰囲気を味わえる唯一の場所です。
それと最後に忘れてはいけないのが、坑内で働くヤマの男たちの雄姿。
そのリアルな姿が、よりこの場所に臨場感を与えてくれていて、これも見逃せないポイントです!
ただ、このリアルさが、子どもたちを怖がらせる原因の1つでもあるのですが・・・。
ちなみに余談ですが、開館の翌年に完成したこのモデル坑道は、今年で50歳を迎えます!
そんな節目の年を迎えるモデル坑道。ここでは、まだまだご紹介しきれなかったものもありますので、石炭記念館が再開したあかつきには、皆さんぜひ、怖がらずに訪れてみてください!!